やってみよう!実証研究入門

2022年3月30日に「やってみよう!実証研究入門」が出版されました。

ナカニシヤ出版 古谷嘉一郎・村山綾(編)

本書の企画のきっかけと工夫したポイントについて、簡単にまとめておきます。一部、本書の「はじめに」からも抜粋しています。

2016年から現所属で授業をしていますが、国際学部なので当然ながら心理学に特化したカリキュラムではありません。自分の専門分野の方法論を体系的に教えられない状況をどうにかしたいと考えたのが本書を企画するきっかけでした。そして、同じような問題に直面していた古谷嘉一郎先生@北海学園大学と話をするうちに、(1)心理統計、(2)アカデミックライティング、(3)代表的な心理学研究法(実験法、調査法、観察法、面接法、フィールド研究、2 次データ分析)の特徴をコンパクトに説明した上で、実際に読者の皆さんにさまざまな研究法をもちいた実習課題(やってみよう!実証研究)に挑戦してもらうための「素材」を提供する1冊を作れないか、ということになりました。それぞれのテーマを扱う書籍は良いものがたくさんありますが、それらを学生の皆さんに全部購入してもらって、授業のたびに持参してもらう、というのはなかなか難しいという現実的な問題も存在します。

企画するにあたって以下のようなポイントにこだわりました。

  • なんなら1人ででも「実習」できるようにした…一部デモデータを提供しています。編者がともに、グループワークの管理が苦手である(貢献度にメンバー間でばらつきが生じることが多く、いざこざや不満の火種になりやすい、成績評価が難しい、欠席者が出た場合の対応など不確実性が高く授業運営の効率性が落ちる、TAがいない中、(私の場合)60名ほどの履修者がいる状態でひとりでやれることには限界がある…etc)ことから着想しました。本書の実践編では、読みすすめるだけでも実習のイメージが湧くような形を目指しました。実習テーマも、多くの方に親しみを持っていただけるようなトピックや理論を扱っています。
  • 各実習テーマにおいて、レポート執筆のためのアウトラインを用意し、「方法」と「結果」のパートは「このまま書けばいいです」というレベルで、ほとんど記述済み…「方法」と「結果」の記述は、お作法的な要素もあり、そもそもの書き方がわからないと挫折しがちです。そのようなポイントで躓いてしまう人が少なくなるようにしました。分析結果が統計的に有意ではなかった場合の記述例も入れています。
  • 人からデータを取ることを実践しようとしている、さまざまな分野、立場の人たちに振り向いてもらえるように心がけた…本書の「はじめに」にも書いていますが、(1)非心理系学部や学科に所属しながらも、大学のゼミ等で心理学を学ぶ学生さん、(2)学び直しの社会人の皆さん、(3)心理学的な(人からデータを取る)実験や調査に興味があるけれど、何からどのように知ればいいのかわからない、という方にとって役立つ内容となるように構成しました。また、(4)心理系学部・学科に所属し、大学のカリキュラムを通して心理学を学ぶ学生の皆さんも、研究法や実習の授業で学習した内容の復習素材として本書を活用できると考えています。ゆえに、本書のタイトルについても「心理学」というキーワードを全面にださず、「実証研究」としました。

本書に興味を持ってくださった方は、ぜひ目次をご覧ください

なお、本書は入門書です。もっと詳しく学びたい、と思った方はぜひそれぞれ(アカデミック・ライティング、心理統計、各種研究方法)をテーマとする専門書籍を手にとっていただければと思います。